心配事って、よく考えてみると「まだ起こっていない未来」ということはありますよね。
この前、インスタやりたいって言ってたけど始めた?
まだ初めてない。
なんで?
誰も見てくれないんじゃないかって、不安になって・・・
こういうことってよくありますよね。
心理療法ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)の本では、このように書かれています。
未来について空想し、まだ起きていないことを心配し、これからすべきことばかりに集中する。そうすることで、「今、この瞬間」の生活を見逃してしまう。
Harris,R. (2009). ACT made simple: An easy-to-read primer on acceptance and commitment therapy. Oakland, CA: New Harbinger(ハリス,R. 武藤 崇(監訳) 2012 よくわかるACT(アクセプタンス & コミットメント・セラピー)―明日からつかえるACT入門― 星和書店)
また、変えられないとわかっていても過去のことで悩むこともあります。
このような「変えられない過去、起こってもいない未来」に対する悩みにはどう対処したら良いのでしょうか?
そのヒントが、心理療法ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)にあります。
大学・大学院で6年心理学を学び、公認心理師の資格を持つ僕が解説します!
変えられない過去、起こってもいない未来に悩む
人は、変えられない過去、起こってもいない未来について悩みます。
- もっと優しく接していればよかった・・・。
- ちゃんと勉強しておけばよかった・・・。
- 定期的に運動してれば、こんなに太らなかったのに・・・。
- SNSやっても、炎上したらやだな・・・。
- オフ会行っても誰ともしゃべれないかも・・・。
- ブログ書いても誰にも見られなかったどうしよう・・・。
こんな考えが頭に浮かぶと、「自分はなんてダメなんだ・・・」と落ち込みますよね。
これは普通のことだからダイジョブ!
あなたの心の弱さとか欠陥じゃないよ。
悩むのは「マインド」のせい
悩むのは、心理療法ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)でいう「マインド」のせい。
心理療法ACTで言う「マインド」は、比較、評価、分析、思い出す、などの頭の働き。
マインドの主な役割は、問題を発見し、解決して、あなたが確実に生き残れるようにすることである
生き残ることがあなたのマインドの最優先事項なので、どんなに小さな問題でも探し出せるよう、超敏感でなければならない
Ciarrochi, J. V., Hayes, L., & Bailey, A. (2012). Get out of your mind & into your life for teens: A guide to living an extraordinary life. Oakland: New Harbinger. (チャロッキ, J. V.・ヘイズ, L.・ベイリー, A. 大月 友・石津憲一郎・下田芳幸(監訳) (2016). セラピストが10代のあなたにすすめるACTワークブック—悩める人がイキイキ生きるための自分のトリセツ 星和書店)
マインドは進化の過程で発達したものだよ。
原始人は、生き残れるように危険を察知するために周りを警戒して、最悪に備えなきゃいけなかったからね。
人間の心は判断や批判をし、ネガティブなことを見つけ出し、最悪を予想する傾向があるってこと?
そういうこと!だから、ネガティブ思考の自分を責めなくていいんだよ。
※ネガティブ思考を持っていることは全く問題ないです。ただ、SNS等で発信したり人に話したりするときには注意が必要。相手を不快にしてしまう可能性がありますので・・・。
過去・未来を考えることは問題ではない
過去や未来を考えること、それ自体が問題ではありません。有益なことも多いです。
例えば、「過去の失敗を改善して同じ失敗をしないようにする」、「未来に起こりうる危険を予測して、対策をとっておく」など。
思考の有効性がポイント!
その思考が「役に立つかどうか」ってことですね。
過去や未来を考えること有益な場合も無意味な場合も、両方あります。
そのため、過去や未来を考えること、それ自体が問題ではないです。
問題は行動ができなくなること
過去や未来を考えること、それ自体が問題ではないなら何が問題なのでしょうか?
問題は、変えられない過去、起こってもいない未来に悩んで、望む未来にとって有効な現在の行動ができなくなること。
例えば、SNSで情報を発信して人の役に立つという未来を望んだとします。
「炎上したらどうしよう」という起こってもいない未来に悩むと、発信するという行動がとれなくなります。
この場合の問題は、発信という行動がとれないこと。
アカウントを作って発信しなければ、「SNSで情報を発信して人の役に立つ」という未来は永遠に訪れません。
あなたの「マインド」はいろいろなことを言ってきます。それに従うと、望む未来にとって有効な行動がとれなくなります。
変えられない過去、起こってもいない未来に悩んで、望む未来にとって有効な現在の行動がとれなくなることが問題なのです。
もう少し詳しく言うと、「価値に沿った行動」がとれなくなることが問題です。価値についてはこちらの記事をどうぞ。
そうは言っても、悩んでいるときに行動するのはハードル高いよ~。
では、どうすればいいのか?
「望む未来にとって有効な現在の行動がとれなくなることが問題」っとは言っても、悩んでいるときに行動するのは難しいです。
このようなとき、どうすればいいのでしょうか?
それは、不快な思考・感情はそのままにしておいて、人生で大切な事(価値)のために行動することです。
忘れよう、考えないようにしようとするのは逆効果
悩みを消す方法を教えてよ。
消そうとしなほうがいいよ。というか、消そうと思うと余計出てくる。
頭の中に、シロクマをイメージしてください。
OK、かわいいシロクマをイメージしたよ。
じゃあ、今から10秒間シロクマのことは忘れてね。
絶対に思い出すなよ~。
はい、10秒。どお?忘れられた?
シロクマめっちゃ出てきた。
皮肉なことに、忘れようとすればするほど思い出しちゃうんだよ。
思考や感情を心から追い出そうとすると、かえって頭に浮かびやすくなってしまいます(Wegner, Schneider, Carter, & White, 1987)。
この現象は、「皮肉なリバウンド効果」や「シロクマ効果」と言われています。
心理的苦痛が生まれるのは、嫌な思考や感情をネガティブな思考・感情を抑え込もうとするから。
じゃあ、どうすればいいんだよ(怒)
不快な思考・感情はそのままにしておいて、人生で大切な事のために行動すればいいんだよ。
そのままにしておく
変えられない過去、起こってもいない未来が頭に浮かんだら、そのままにしておきましょう。
消そうとすると、うまくいきません。余計に出てきます。
思考・感情をコントロールしないで「そのままにしておく」のがコツ!
「不快な思考・感情を取り除こうとせず、心を開いてそのまま体験すること」をアクセプタンスと言います。
別の言い方をすると、「心を開いてつらい思考・感情を受けいれる空間を作る」ということです。
嫌な気持ちを「ありのまま」にしておくんだね。
心理療法ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)では、以下のように考えます。
- 悩みとか感情を抑え込んだり消し去ろうとするのは難しい。
- むしろ、抑え込んだり消し去ろうとするから余計に苦しむし、行動できなくなる。
- 悩みとか感情と戦うことにエネルギー使うよりも、その悩みや感情を受け入れて人生で大切なことのために行動することにエネルギー使う。
価値に沿った行動をとる
悩みや感情と戦うことにエネルギー使わなくなれば、人生で大切な事のためにエネルギーを使えます。
「人生で大切な事」=「価値」
あなたが人間としてどう行動したいのかを表すもの。
どんなことに幸せを感じるのか?を表すもの。
悩み自体は消せません。頭の中に残っています。しかし、その状態でも人生で大切な事のために行動することはできます。
自分の「価値」を明確にしておくといいよ!
価値の詳しい解説はこちら
「価値に導かれながら、効果的な行動をとること」を「コミットされた行為」と言います。
痛みや不快な思いを伴っても、人生で大切にしたいことのために必要なことをするのが「コミットされた行為」。
「変えられない過去、起こってもいない未来」に悩むときには・・・
不快な思考・感情はそのままにしておいて、人生で大切な事(価値)のために行動することで対応できます。
- 避けられない苦しみをなくそうとせず(アクセプタンス)、
- 人生を豊かにする行動をとること(コミットメント)。
心理療法ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)の考え方だよ。
まとめ
- 悩むのは「マインド」のせい。
- 望む未来にとって有効な現在の行動ができなくなることが問題。
- 忘れよう、考えないようにしようとするのは逆効果。
- 思考・感情をコントロールしないで「そのままにしておく」。
- 価値に沿った行動をとる。
ACTのおススメ本はこちら↓
最初に読む一冊としてはこちら。ACTを分かりやすく説明してます。
行動力を上げたい方はこちらの本。
10代向けですが、20代以降の人にもおススメ。とても分かりやすい本です。監訳者のあとがきにも、「アラフォーの我々にとっても人生を応援してくれるような本」と書いてあります。
少し専門家向け。詳しく知りたい方はこちらの本をどうぞ。
参考文献
Ciarrochi, J. V., Hayes, L., & Bailey, A. (2012). Get out of your mind & into your life for teens: A guide to living an extraordinary life. Oakland: New Harbinger. (チャロッキ, J. V.・ヘイズ, L.・ベイリー, A. 大月 友・石津憲一郎・下田芳幸(監訳) (2016). セラピストが10代のあなたにすすめるACTワークブック—悩める人がイキイキ生きるための自分のトリセツ 星和書店)
Harris,R. (2009). ACT made simple: An easy-to-read primer on acceptance and commitment therapy. Oakland, CA: New Harbinger(ハリス,R. 武藤 崇(監訳) 2012 よくわかるACT(アクセプタンス & コミットメント・セラピー)―明日からつかえるACT入門― 星和書店)
Harris, R. (2027). The happiness trap: How to stop struggling and start living. Shambhala Publications.(ラス・ハリス.岩下慶一(訳).(2015) 幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない 筑摩書房)
Wegner, D. M., Schneider, D. J., Carter, S. R., & White, T. L. (1987). Paradoxical effects of thought suppression. Journal of personality and social psychology, 53(1), 5.